Dear…

□Don't Die Away
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「……大丈夫か?」



大方の予想通り隊舎には誰の姿もなく、替えの死覇装に着替えた沙羅は心配顔で覗き込むルキアにこくんと頷いた。



「平気。……ごめんね、驚かせちゃって」


少し落ち着きを取り戻したのか、力ないながらも沙羅は笑ってみせた。


赤く泣き腫らした瞳はそのままに。



「……待ってろ、今何か温かい飲み物を持ってくる」


「うん……ありがとう」



胸が詰まりそうになる想いを必死に抑えてルキアは腰を上げた。


逃げるように給湯室に入り、押し留めていた息をゆっくりと吐き出す。



つい先程まで泣き暮れていた人間が、どうしてああも穏やかに笑えるのか。


その答えをルキアは知っていた。



沙羅は事の詳細を自分に話す気はないのだ。


だから心配をかけまいと平気な振りをする。




ふう、ともう一度大きく息をついてルキアはやかんを火にかけた。




昔からそうだ。


沙羅は決して人に弱みを見せない。


それは心を開かないだとか距離を置いているだとかそういう意味では全くなく、何よりも相手のことを優先してしまうのだ。



人の心の機微に敏感な沙羅は仲間の悩みや苦しみにいち早く気づく。


そんな仲間を慰めたり、励ましたりしているうちに、自分自身の悩みについてはなおざりになってしまう。


そして周りにいる仲間たちもまた、いつも明るく笑いかけてくれる彼女がまさかそんな苦しみを抱えているだなんて疑いもしない。


自ら望んでそうなるように仕向ける――そういう娘なのだ、沙羅は。





「……沙羅、コーヒー淹れ――」



ウサギのチャッピー柄のマグカップを手に戻ってきたルキアは、ソファーの上で丸くなっている姿に声を潜めた。



気配を殺して近づけば、沙羅はすうすうと寝息を立てて眠っている。



ほっと表情を和らげて、彼女を起こさないように毛布をかけてやりながらルキアは呟いた。




「たまには甘えてもいいんだぞ、沙羅……」






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