Dear…

□Remember
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これでよかったんだ――



そう言い聞かせる理性とは裏腹に、頭は否応なしにあの日の映像を繰り返し再生した。




『ずるいよ……』



涙に濡れた濃紫の瞳が頭から離れない。



『ウルキオラ――――っ!!』



彼女の哀しみに満ちた声も、嘆きも、何もかもが頭から離れない。




暴れ出す悔恨の念を歯を食いしばって胸の内に押し留める。



仕方ない。仕方なかった。



あのまま傍にいれば、俺はもっと彼女を傷つけた。



どれだけ深く心を通わせようと、所詮は破面と死神。


その間にはどう足掻いても越えようのない高い隔たりがある。




だから……これでよかったんだ。






しばらくソファーに身を預けて瞼を閉じていると、扉を隔てて同じ十刃である水浅葱の髪の男の声が響いた。



「――おい。任務の時間だ」




「…………ああ」



けだるい体を引きずり起こして、白の上着に袖を通した。



こうして俺は


今日もこの服を罪なき死神の血で赤く染め抜く。



虚の本能に突き動かされるまま、意味のない殺戮を繰り返す。







沙羅――



できることなら、いっそ全て忘れてほしい。



遥か彼方の記憶など、そのまま失くしてしまって構わない。



そして『過去』の俺のことも、『今』の俺のことも、全て忘れて。



おまえにはただ――遠い異界の空の下で笑っていてほしい。



幸せになってほしい。






それだけが





二度の生を以てしてもおまえを傷つけることしか叶わなかった、俺の唯一の願いだから――








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