Dear…
□Jewel Eyes
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第一印象は『宝石のような眼をした人』だった。
「本日よりこちらの防衛軍・第三部隊に配属されることになりました、草薙沙羅と申します。
どうぞよろしくお願い致します!」
百年前――現世。
時はいくつもの党派が天下の掌握をかけて勢力争いを繰り広げる戦乱の時代。
「部隊長の萩谷だ。こちらこそよろしく頼む」
その中の一つ、都の治安を護る王都防衛軍に所属する沙羅は、新たな配属先である第三部隊の詰所を訪れていた。
「本部からの報告じゃなかなかに腕が立つそうじゃないか。期待してるよ」
「はい。ご期待に添えるよう頑張ります」
握手と共に力強い頷きを返した沙羅に、部隊長を名乗った萩谷という男性はにこやかに笑った。
「しかしまさかこんな別嬪さんが来るとはなぁ。
大の男を一太刀でのす女剣士だっていうからどんな豪傑かと思いきや――
……あぁ、すまない。別に偏見持ってるわけじゃないんだが」
「いいんです。よく言われますから」
途中で言いよどんだ萩谷に思わず苦笑を浮かべ、首を振る。
女の身でありながら闘いの中に身を置くことに疑問や蔑みの目を向けられるのは日常茶飯事であり、沙羅自身もう十分に耐性が出来ていた。
それを支えているのは確固たる実力。
事実、沙羅に後方援護主体の第九部隊から前線の第三部隊への転属命令が下されたのも、その力量を正当に評価されてのことであった。
「それじゃ改めて、第三部隊へようこそ。
まずは隊員たちを紹介するからこっちへ来てくれ」
「はい!」
萩谷に連れられるまま詰所内を案内され、隊員たちと手短に挨拶を交わしていく。
最初こそほとんどの隊員が萩谷と同じように驚きの表情を見せたものの、そこはきちんと指導が行き届いているらしくすぐに笑顔で歓迎の意を表してくれた。
「さて。あとはあいつだけなんだが――」
一通りの挨拶回りを終えた頃、窓から首を出して辺りを見回していた萩谷の背後でガラリと詰所の引き戸が開かれた。
「お。噂をすればだな。こいつが最後の一人だ。
――おーい紫苑!」
萩谷の呼びかけに顔を向けた黒髪の男。
その瞳の中で深緑色の宝石が静かな光を放っていた。
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