Dear…

□Two Men
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清音に引き摺られるように瀞霊廷へ帰還した沙羅は、そのまま強制的に救護詰所へと連行された。




「姉さん!姉さんいる!?」



夜も更け人もまばらな詰所にズカズカと踏み込むなり声を張り上げた清音に、奥の控え室から呆れ顔の姉――虎徹勇音が姿を見せる。



「清音、もう少し声のトーンを落としてって何回言えば――
……沙羅ちゃん!どうしたの!?」


「すみません勇音さん……ちょっとドジっちゃって」



辛うじて身を覆っていると言っていい擦り切れた死覇装姿の沙羅に、妹を超える素っ頓狂な声を上げた勇音はすぐさま顔色を変えて駆け寄った。



「ひどい怪我……すぐに治療するから横になって!」


勇音に言われるまま死覇装を脱ぎ、診察台に寝そべりながら沙羅は苦笑した。



つい数日前までここに入院していた身でありながら、また世話をかけることになるなんて。


本当に情けない。



冗談ではなく隊長のことばかり言っていられないな、と心の中で吐息を漏らした。





「……うん、これでもう大丈夫。
最初見たときは驚いたけど、すぐに手当てしてあったおかげで傷口の炎症は防げたみたい。
この分ならすぐに良くなるわ」


「ありがとうございました」



思いのほか短時間で済んだ治療の後、新しい死覇装に袖を通して深々と頭を下げる沙羅に首を振りながら、勇音は治療の最中気にかかっていたことを問いかけた。



「それより、よく自分でこれだけの処置ができたわね」


もうほとんど跡すら残っていない傷口を見て、改めて感心する。



皮膚組織を破壊せずに霊圧を注ぎ込んで傷口を塞いだ鬼道の腕前ももちろんだが、その霊圧を崩さずして、なおかつ一切の無駄なく巻かれている止血帯と包帯の使い方もまた見事なものだった。


治療を専門とする四番隊の中でも、自力でこれだけの的確な処置を施せる隊士はそうはいまい。



純粋に感服と称賛の気持ちでそう告げた勇音だが、それを受ける沙羅は曖昧な笑みを返すばかりだった。






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