Dear…

□A Man Sank A Hollow
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満開に花開いた桜の下、紫苑は鼓動を止めた沙羅の身体をいつまでも抱き締めていた。



「うっ……沙羅……っ」


背後ですすり泣く仲間の声も、今は耳に入らない。



声も漏らさず、身動き一つ取らず、紫苑は壊れた機械のように沙羅を腕に抱いたままうずくまっていた。




「紫苑……本陣へ戻ろう」



やがて日も傾きかけた頃、仲間がその肩に手を置いても。


紫苑はぴくりとも反応しない。



「……しっかりしろ。
沙羅を埋葬してやらないと――」



だがその仲間が沙羅の亡骸に手を伸ばした途端、紫苑の口から低い声が洩れた。



「触れるな」



怒りとも、哀しみともとれない、低く押し殺した声で。



「沙羅に……触れるな」



自分以外の何者かがその身に触れることを彼は固く拒んだ。



そうして誰の手も借りることなく力を失った沙羅の身体を抱きかかえた紫苑は、反乱軍を鎮圧し勝利に湧く本陣へと帰還した。







「沙羅……」



物言わぬ姿となり果てて戻った沙羅に、萩谷を始め第三部隊の仲間たちは皆声を詰まらせて涙を流した。


その間も紫苑は片時も沙羅の傍を離れることはなかった。




葬儀は二日後に営まれることになった。



此度の戦では沙羅以外にも多くの死者が出たものの、彼女は特に防衛軍の勝利に貢献した者として手厚く葬られた。



だが、それを死に物狂いで止めようとしたのが紫苑。


棺に納められた沙羅と引き離されるのを頑なに拒み、部隊の仲間たちは暴れる彼を数人がかりで抑えつける羽目になった。



そうして沙羅の火葬が終わると、紫苑はそれまで暴れていたのが嘘のように力を失い、一言も言葉を発することはなくなった。




それから一週間が過ぎた頃。



抜け殻と化した紫苑を気遣い、萩谷と隊員たちは紫苑の自宅を訪れていた。







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