Dear…
□Walk in the Past
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「――はい!」
突然「ちょっと待ってて」と告げていずこかへ姿を消した沙羅が、戻ってくるなり差し出した白い物体にウルキオラは目を瞬いた。
「何だ?」
「ソフトクリーム。美味しいよ?」
ずいっと目の前に突き付けられたそれを、仕方なしに一口含む。
途端に口内にひやりとした感触と甘い香りが広がったが、ウルキオラは眉間に皺を寄せたままだった。
「……あれ?美味しくない?」
「ただの冷たい砂糖菓子だな」
「だってウルキオラ、甘い物好きでしょ?」
「別にそこまで好きじゃない」
ウルキオラがそう呟くと沙羅はさっと血相を変えた。
「えっ嘘!?
だっていつもお菓子食べてくれるから――」
「あ……いや」
まさか無理に食べていたんじゃ、と青褪める沙羅にウルキオラは言いにくそうに口籠もる。
それを見てますます邪推を深める沙羅が勘違いする前にと、ウルキオラは渋々口を割った。
「そうじゃない。甘い物を特に好みはしないが――
……本当におまえの作る物は好きなんだ」
視線を外しながらぼそりと呟く。
「……本当に?無理してない?」
「何度も言わせるな」
てっきり気を遣ってそう言ってくれたのかと勘繰ったが、決まり悪そうに明後日の方向を眺めるウルキオラの横顔を見ればどちらが真実かは明らかだった。
「ウルキオラ……」
「……何だ」
不貞腐れた様子のウルキオラが無性に可愛く感じて、つい口元が緩んでしまう。
けれどそれを悟られればこの人は余計にへそを曲げるに違いない、と沙羅は必死に笑いを噛み殺した。
「また作るね」
「……ああ」
隣で嬉しそうに微笑む沙羅の顔をちらりと一瞬だけ盗み見て、ウルキオラもまた表情を和らげた。
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