Dear…

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誰かの体温を感じて目が覚めた。



うっすらと輪郭を取り戻していく視界の中心に、自分のものとは違う骨格の整った肩が映し出される。


そこでやっと彼の腕の中にいるということを理解した沙羅は、まだ眠気の残る瞼を押し開いてふっと表情を和ませた。



沙羅の目と鼻の先にいるウルキオラの瞼はまだ閉じられたままで、唇からは規則的な寝息が漏れている。



こんな無防備な寝顔を見るのは初めてだ。


そういえば『ウルキオラ』としての彼との初対面では、今とは逆に沙羅が無防備極まりない寝顔を晒してしまったことを思い出す。(しかも屋外で)


なんだかウルキオラにだけ弱みを握られているようで悔しかったけど、それもこれでおあいこかな、などと子供染みたことを考えて沙羅はひっそりと笑いを噛み殺した。



――と。



「……随分楽しそうだな」


「わっ」


腰に回されていた腕に急に力が籠もって、完全に不意を突かれた沙羅は難なくその胸に抱き寄せられた。



「びっくりした……起きてるなら言ってよ」


「人の寝顔を盗み見しているような奴に言われたくないな」



憎たらしい表情を浮かべて言うウルキオラにぐっと喉を詰まらせて沙羅は反論する。


「だって、ウルキオラの寝顔なんて滅多に見られないじゃない。
だからよーく眺めて覚えておこうと思って」


「寝顔なんかを眺めていて楽しいか?
それなら俺は昨日のおまえの方が――「わわわわ!!」


何やらとんでもないことを口走りそうなウルキオラの口を沙羅は無理やり両手で塞いだ。


誰に聞かれているわけでもないが、改めて言葉にされるのはあまりにも恥ずかしすぎて耐えられない。


されるがままになっているウルキオラは、顔を真っ赤に上気させる沙羅を見てくつくつと肩を揺らしている。



「〜っ、わかってて言ってるんでしょう!からかわないでよ」


「本当のことを言っただけだ。
大体あれはおまえがあんな――「それはもういいってばー!」



強気な表情が一転、泣きそうな顔になって頭を埋める沙羅を、ウルキオラは愉しそうに眺めながら髪を撫でた。



そして思い出したように一言。



「沙羅、言い忘れていた」


「……何?」



次は何を言われるのかと恐る恐る顔を上げる沙羅が可笑しくて、ウルキオラは頬が緩んでしまうのを止められないままに告げる。



「おはよう」



その言葉に一度大きく瞬きをした沙羅は、すぐに顔を綻ばせると「おはよう」と返した。



一日の始まりを告げる挨拶を交わすことが、こんなにも嬉しく感じられるのは初めてかもしれないと沙羅は思った。






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