Dear…

□A Betrayer
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五番隊第四席・桑島大悟は気さくで快活な青年だった。



「まさか草薙副隊長から話しかけて頂けるとは思いませんでした!
雛森副隊長とは同期だったんですよね?
すごいなぁ……雛森副隊長の代は他にも吉良副隊長や阿散井副隊長もいますし、僕たちにとっては憧れの世代なんですよ」


話を聞けば沙羅たちの三期下で霊術院を卒業したという桑島は、興奮を抑えきれない様子で朗らかに笑った。



『しっかり者の四席』


雛森や他の隊士たちからもそう称される彼は、隊長・副隊長不在の穴を埋めるべく獅子奮迅の活躍を見せているらしい。


もはや五番隊の中核と言って差し支えない存在だ。



「それで、僕にお話ってなんでしょうか?」


人当たりの良い笑みを浮かべて首を捻った桑島に、沙羅は一度思い悩む素振りを見せてから口を開いた。



「……少し藍染隊長の話を聞きたいの」



途端、それまでの笑みが嘘のように桑島の表情が険しくなる。


そこには憎しみの色がありありと浮かんでいた。



「あんな男はもう隊長でも何でもありませんよ。ただの裏切り者です」


そう吐き捨てる桑島を真っ直ぐに見据えて、沙羅は「でも」と続ける。



「あなたは藍染隊長にすごく憧れてたんでしょう?」


「確かに以前は憧れてましたけど――今じゃ憎いと思ってますよ。
あんな形で僕たちを裏切るなんて……それに気付けなかった僕も僕ですけどね」


ふっと嘲笑を漏らす桑島に、沙羅は痛ましげに瞼を伏せて頷いた。



「そう……だよね。
私も藍染隊長のことは赦せない。
雛森はあんなに藍染隊長の為に尽くしていたのに、それを簡単に斬り捨てて――」


「…………」


「結局……藍染隊長は部下のことを駒としか思ってなかったのかな」


「…………ええ。
本当に……雛森副隊長が可哀想だ……」



おもむろに視線を逸らして呟いた桑島の横顔を、沙羅は一瞬たりとも見逃さないよう見つめていた。




そうして幾ばくかの沈黙の、後。



沙羅はそれまでの沈んだ声とはがらりと声音を変えて、桑島に言い放った。




「どうやら藍染様からは何も聞かされていないみたいね」







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