Dear…

□Blackout
1ページ/9ページ




五番隊第四席・桑島大悟が一番隊に出向いてしばらく経ってからも、瀞霊廷に内通者の噂が流れることはなかった。




桑島は流魂街北西部への長期滞在任務を言いつけられ、今や瀞霊廷内でその姿を見る者はいない。


無論それはあくまで表向きの説明であって、実際彼は瀞霊廷の地下に存在する罪人用の調査室に軟禁されていた。



とはいえ、取り調べに対する桑島の態度は清廉そのもので、厳しい尋問にも俯くことなくしっかりと受け答えをしているらしい。


罪状は免れないが、然るべき罰を受け償いを果たせばいずれは職務に復帰することも可能だろうという浮竹の見たてに、沙羅はほっと胸を撫で下ろしていた。



「しかし沙羅、おまえいつから桑島に目星をつけていたんだ?
俺たちですらまだ絞り始めたところだったんだぞ」


不思議そうに訊ねてくる浮竹に沙羅は内心で密かに焦った。


一連の破面襲撃事件については、尸魂界上層部でも内通の可能性を指摘する声が上がっており、浮竹ら各隊長にはその懸念がある者を絞り込むよう裏で命が下っていたらしい。



「別に目星をつけていたわけじゃないんです。
たまたま五番隊の隊舎に行ったときに彼と話す機会があって、少し様子が気になったので――」


桑島を特定するに至った経緯については少々脚色を加えて話すことにした。


いくら浮竹相手とはいえ、下手に言い過ぎると後々不都合が生じかねない。



「そうか――まあ早い段階で解決出来て良かった。
こちらの情報が筒抜けでは対策も何もあったもんじゃないからな」


「そうですね……。これでしばらくは破面の襲撃も収まりますよね」


「ああ。頼みの綱が切れたんだ、あちらも慎重にならざるを得ないだろう」



良かった――と安堵の息を漏らしながら、沙羅はその破面側の存在である恋人に想いを馳せた。



ウルキオラの助言がなければ、今回の内通行為の早期解決は到底為し得なかったであろう。



「ありがとう……」



主の命に背いてでも自分を支えようとしてくれているウルキオラに、沙羅は喉の奥で呟いて綺麗に澄み渡った青空をそっと仰いだ。







.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ