過去拍手

□作戦成功
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がし。

咄嗟にその場を走り去ろうとした彼女の腕を掴む。


「わ!何?」

「……誰のところに行くつもりなんだ、おまえは」

「泊めてくれそうな人のとこ」

「…………」


いや、それはそうなのだろうが。

せめてもう少しましな選択肢はないものか。


「……そいつらは駄目だ」

「何でよ?そんなのウルキオラに関係――」

「駄目なものは駄目だ!」

珍しく語気を強めたウルキオラに、彼女は驚いて黙り込んだ。


繰り返すが、彼女には友人が多い。

その中には男の数も少なからず入っていて。

彼女は友人と思っているのだろうが、相手の男は決してそうではない。はずだ。


特に今名前が挙がった三人は、ウルキオラにとっては彼女の身を脅かす要注意人物。

彼女が「泊めて」なんて押しかけた日には、舌なめずりして受け入れるに違いない。


「だって……それじゃあどうすればいいの……」

目の前の彼女の表情がだんだんと泣き顔へと変わる。

その彼女を前に脳内で何百回もの葛藤を繰り返し、ウルキオラはとうとう覚悟を決めた。


「……わかった」

「え?」

「今夜は俺の部屋に泊まれ」

「……ホント?いいの!?」

さっきまで泣きべそをかいていたのが嘘のようにぱぁっと顔を輝かせる。

「ああ。だが俺のベッドは一人用だ。狭くても文句言うなよ」

「うん、言わない!ありがとうウルキオラ!」


他の男どもよりは、自分といるほうがまだ安全なはずだ。

……きっと。

…………多分。

………………やっぱり自信がなくなってきた。


「……どうなっても知らないからな」

吐息交じりにそう洩らせば。

「とっくに覚悟はできてるよ?」

そう彼女は笑った。今日一番の笑顔で。

「…………(ぷちん)」


午後3時。

ベッドに入る時間にはまだ程遠い、けれど。


(駄目だ……もう完全に理性が飛んだ)

(そんな理性、早くなくしてほしかったの)



最初から、あなたの部屋にしか泊まる気はありませんでした。



【作戦成功】
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