過去拍手

□ただいま
2ページ/3ページ



家主の存在を示す灯りが灯された彼の部屋。


すぐそこに、カカシがいる。いるのに。


足は張り付いたかのように動かない。




会いたい。


怖い。


会いたい。


怖い。



……でも、会いたい。




ふたつの想いが何度も交錯したけれど、結局最後に残ったのはひとつきり。


逃げ出しそうになる身体を無理矢理奮い立たせて、重い足を引きずった。


ようやく玄関前まで辿り着き、チャイムに手を伸ばしかけてまた躊躇う。



彼の家を訪れるとき、いつもチャイムは鳴らさなかった。


カカシは自分が中にいるときは鍵をかけなかったし、何よりそうすることを嫌がった。


曰く、「ここはおまえの家でもあるんだから、わざわざチャイムを鳴らす必要はないでしょ」と。



暫し逡巡して手を下ろす。


銀色に光るドアノブをゆっくりと引いた。




がちゃり――



やっぱり鍵はかかっていない。


かかっていないが……今ほどこの扉を重いと感じたことはないと思う。



それでもなんとか開いた扉の隙間からまばゆい光が零れて。





その先に待ち望んだ人はいた。





.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ