過去拍手
□今日は俺の誕生日!
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「重い。離れて」
「嫌だ!うんって言ってくれるまで離れない!」
「……その登録証、『九月十五日生』じゃなくて『九月十五日没』に書き換えてあげましょうか?」
「それも嫌だぁ!!」
クナイを右手に光らせてみせればカカシはイヤイヤと首を振ったが、それでも離れる気配はない。
とうとう根負けしたのか、彼女はふうーと溜め息を零して立ち止まった。
「カカシ」
凛と鳴る高らかな声にカカシはびくっと顔を上げる。
だが見上げた先にあったのは思い描いていた表情とは正反対のものだった。
「誕生日、おめでとう」
滅多にお目にかかることのない、彼女の極上の笑顔。
この世の全てを凌駕するほどに優しくて、温かくて、美しくて。
カカシの心を一瞬にして奪った笑顔。
そしてこれまでに一度として、カカシはその笑顔に抗えたことはない。
「あ、ありがとう」
思いがけず向けられた彼女の笑顔が嬉しくて、それと同時に照れ臭くなって、カカシはぽりぽりと頭を掻いて笑った。彼女の左腕を放して。
すると。
どろん。
「え?」
彼女の姿は白煙に包まれ、かき消えた。
そしてそこには頭を掻いたポーズのままのカカシだけがひとりぽつんと取り残された。
その後、半べそをかきながら駆け回るカカシの姿が街で噂になったとかならなかったとか――
はたけカカシ、三十歳の秋。
Happy Birthday!