過去拍手

□新たな年に願いを
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「おまえそれ誰から聞いた」


「市丸様」


「…………。
多分、絶対、騙されてるぞ」


「ええー!そうなの!?」



丸い瞳が零れ落ちそうな勢いで驚くそいつに、吐息交じりに言ってやる。



「新年を迎えるにあたって抱負を掲げるというのは間違っていないがな。
それから抱負は厳密に言えば願い事とは違う。
こうありたいとか、こうしようとか――まあ自分なりの計画だな」


「へぇ〜。すごいウルキオラ!物知りー!
『馬鹿のひとつ覚え』ってやつ?」


「全く違う。どちらかというとそれはおまえに当てはまる」


「ふーん?」



中途半端に首を傾げながら頷いているこいつは絶対に意味をわかっていないと思う。


しかしそれを説明するのも面倒だったので、先程「ホーフ」と称して言っていたことについて訊ねてみた。



「人間になりたいのか?」


「う〜ん……でも、自分で叶えられることじゃないといけないんでしょ?」


「まあそうだな。叶う望みもないようでは抱負とは言えない」


「それなら――」



しばしうむむと考え込んだ後、そいつは今日一番の笑顔を俺に向けた。



「来年もウルキオラの傍にいられますよーに!」





「……それは抱負か?」


「うん!頑張る!」



ぐっと握り拳を作って、早速短冊を書き直しているそいつ。


呆れるほど真剣なその姿に、思わず笑みが零れた。



「何もしなくても叶うような願いも、抱負とは言えないんだがな……」


「……え?何?」



顔を上げたそいつの問いかけにはあえて答えずに、床に下ろしていたモミの木を持ち上げた。



「それでこの木をどこまで運ぶつもりなんだ?」


「あ、えっとね、『アマノガワ』だって!
どこにあるのか知ってる?」



地図を広げて首を捻る姿に、不覚にも声を出して笑った。



多分俺をこんなにも笑わせるのはこいつぐらいだろう。




「……乗りかかった船だ。
見つかるまで一緒に探してやるさ」




来年も、そのまた次の年も、ずっとな。













++++++++


まだあどけないちびっこヒロイン。

教育係のウルキオラは彼女が大人になるまで辛抱強く(でも自分の都合のいいように教え込みながら)待っているに違いない。


A Happy New Year!!
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