Dear…U

□Shion
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第一印象など特になかった。






王都防衛軍・第三部隊詰所内、鍛錬場。

桐宮紫苑の一日はここから始まる。



「はっ」


掛け声と共に銀色の刀身が朝の冷えた空気を切り裂いてひゅんと唸りを上げる。

日課としている千本の素振りを終えた紫苑は、刀を鞘に収めて汗を拭った。


息を整えながら東の空を見遣る。ちょうど朝日が完全に姿を現す頃合いだ。

時間か、と呟いて紫苑は荷物片手に踵を返した。

もうじき朝礼が始まるだろう。


変わらない日常。

変わらない朝。

不変的に繰り返されるこの日々を、紫苑は特に不満には感じていなかった。かといって満足しているわけでもないが。


ただ変えたい部分が見当たらないだけだ。

願い、夢、野望。そんな大それたものは特にない。


何もせずとも月日は流れていく。ならばその流れに身を委ねていればいい。

そしていつの日か最期の瞬間が訪れて、自分の人生は幕を下ろす。

そんなものだろうと。



この僅か数分後、彼の人生に劇的な変化をもたらす出逢いが待っていることを、紫苑はまだ知らない。


そう、春を間近に控えたこの朝に。





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