オリジナル駄文[短編]

□至上最大危機的ピンチ
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『これで…終わりだ!』


魔王を倒して勇者はお姫様を奪還。国に帰って結婚してハッピーエンド。

何周もして見慣れたストーリー。

今回もエンドロールを見て終わり。コンプリート目指してもう一周するかと意気込んだそのとき…

急に目眩が俺を襲う。

そして、次に目覚めたとき…


「これで…終わりだ!」


…目を覚ますとそこはゲームの中でした。






…って、いやいやいやいや!!

これ夢だよな?

夢にしてはリアルすぎるというか、目の前の勇者コスプレした人めちゃくちゃ忠実に再現してるなぁ…

てか、殺気?ってのか、これ…。ピリピリしてる空気やばい…


「俺ここにいちゃいけないならすぐ退場しますけど、俺空気読めない人間じゃないからコスプレは見るだけでしたことないから詳しいこと分からないけど、冷やかしじゃないから、ホント訳分からんけどまじでごめんなさい!!!!!」


今にも剣を振りかざして振り下ろそうとしているイケメンにまくし立てるように謝り倒す。

剣が振り下ろされる瞬間、もう駄目だと目をつぶって両腕で頭を庇う。

あぁ……俺死ぬんだ。短い人生だった…てか、夢なのか夢なら覚めるだけだよな。

いろんなことが走馬燈のようにぐるぐると頭の中を駆け巡る。
すぐに来るであろう衝撃と痛みを予想して体が強ばる。






………………………ん?



来るであろう衝撃が襲ってない。
恐る恐る庇っていた腕の間からそっと目の前の男を覗き見た。

銀色に光る剣先は未だこちらを狙っていた。

だが、先程までの殺気はない。ただ警戒は解かずにこちらの様子をうかがっていた。


「お前、名前は?」


殺気が消えたこともあり、剣を向けられていることは気になるが、それよりも勇者の金髪碧眼のイケメンぶりに同じ男ながら見とれてしまっていた。

世の中にはこんなイケメンもいるんだなぁ…などと、思っていたらいつまでも質問に答えない俺に少し苛立った様子を見せて剣先を近づけてきた。


「やはり、魔王か?」


「いやいやいやいや!!!違います人違いです。俺は一般人!しがない村人Aです!」


「村人…?」


「そうですそうです!なんでこんなとこにいるのかは分からないですけど…」


「名前」


「へ?」


「名前はなんだと聞いている」


「沙樹です。佐々部沙樹」


「…サキ、か。随分と魔王らしくない可愛らしい名だな」


「なっ!?」


「…気に入った。その怯えた顔も俺の嗜虐心をくすぐる」


「え……は?今なんと?」


困惑する俺を無視して、剣を鞘に納めつつ、勇者様はすんばらしい笑顔を浮かべ、爽やかにとんでもないことを言い放った。


「喜べ。今日からお前は俺のものだ」


「は?」



そうして気が付くと、俺は有無を言わさず勇者様の腕の中。
見上げれば意地の悪い笑顔を浮かべた勇者様。
え、こんな展開知らないんですけど…てか、ゲームの設定どこいった?


異世界トリップとかとんでもない状況が起こっているはずなのに、それを上回ることが起こりそうな予感に絶望しかありません…。どうしよう、俺。





イケメン爽やか勇者様はとんでもないドS野郎でした。

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