07/02の日記
10:03
彩雲国幼稚園 2
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今日も彩雲国幼稚園キリン組の生徒たちはみんな元気に走り回っていた。
グランドで鬼ごっこをしたり、ままごとや砂遊びなど皆、思い思いに自分の世界を楽しんでいた。
楽しげな子供たちをよそに、新米先生の李絳攸は次のお歌の時間用の準備をしていた。
「こーゆ、僕が本読んであげる」
キリン組の生徒の一人、藍楸瑛が少し重そうな手提げカバンを両手にかかえ、パタパタと絳攸に駆け寄った。
お歌の準備もほとんど終わっていたので、楸瑛の遊びに付き合ってあげる。
「ああ、本を持ってきたのか?」
「うん!お兄ちゃん達が昨日、貸してくれたの」
そう言って楸瑛が手提げカバンから取り出したのは、少し厚めのハードカバーの本だった。
(ぎゃー!なんて本を子供に貸すんだ!!!)
それは去年、大きな賞を受賞した本だった。
基本はちゃんとした小説なのだが、男女の大胆な性描写が話題になり、今年映画化されるらしいと聞いた。
「楸瑛、その本は子供用じゃないからダメだ」
「ヤダ!この本が読みたい!」
「難しい漢字がいっぱいあって読めないぞ」
「じゃあ、読めない漢字はこーゆが読んで」
そう言って楸瑛は自分の膝の上によいしょ、と腰を降ろした。
早く、早く、と楸瑛は嬉しそうにせがむ。
まぁ、教育に良くない部分は飛ばせばいいか。
それに難解な漢字が多く、話の内容も子供が喜ぶような物ではないので、すぐ飽きるだろう。
読み始めると思ったとおり、楸瑛は平仮名だけを読み、内容よりも声を出して読む事が楽しいといった感じだ。
「こーゆ、この漢字は?」
「『好き』だ」
「これは?」
「『愛してる』」
「これは?」
「『接吻』」
「じゃあ、これは?」
「・・・・・・」
絳攸を見上げ、キラキラとした好奇心いっぱいの瞳で見つめる。
「ねぇ、ねぇ、これは?」
「・・・・・『愛撫』」
(こいつ、読めてるんじゃないのか・・・?)
※ ※ ※ ※ ※
読めてます。
こうやって絳攸先生は楸瑛に遊ばれてゆきます。
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