07/03の日記
09:29
春の雪パロ 5
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「眠ったよ」
絳攸を起こさないように寝室の扉を静かに閉める。
室には長椅子に座って、半蔀から庭園を望む黎深だけがいた。
一見落ち着いているようにも見えるが、扇をしきりに動かし、パチンパチンとせわしなく音を立てていた。
こんなとき、父親は動揺するばかりで、まったく役に立たない。
絳攸が倒れたときの黎深の慌てる様を思い出し、百合は相好を崩した
「絳攸に君が仕事、頑張ってるって言ったのに」
「ふん。私の勝手だ」
今日は出仕する気はないらしい。
まぁ、今の様子では出仕してもいつも以上に足手まといだろう。
吏部官吏たちの精神衛生の為にも、邸で大人しくさせているほうが得策だ。
「で、聞き出せたのか?」
その問いに、百合は無言で頭を振る。
「相手をかばってるよ」
あの様子では絳攸は決して相手の名前を口にはしないだろう。
絳攸が紫家との婚約に悩んでいた事位は、初めから解っていた。
百合達もむしろ早すぎる結婚を快く思ってはいなかった。
だからあえて縁談の話が持ち上がった時に絳攸には伏せておいたのだ。
だが何も言わない百合達をいいことに、紅家に跋扈する狸ジジイ達は直接絳攸に縁談の話を持っていったのだ。
当主の役に立てる、紅家の為だと言われれば絳攸の返事は是に決まっていた。
本人の意志が決まってしまえば、それを無碍には出来なかった。
幼い子供のように、嫌だ嫌だと駄々を捏ねてくれればよかったのに、生真面目な娘はそんなことはしなかった。
パチンと扇の音が一際高く響いた。
「では、行くか」
「・・・・そうだね」
こうなってしまった以上、絳攸の望む未来は叶えてあげられなくなってしまった。
だが、それとこれとは別な問題がある。
「落し前、つけてもらわないとね」
※ ※ ※ ※ ※
貴族の体面を気にする紅家当主夫妻が想像できない・・・。
なので原作とは段々とかけ離れていってますね。
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