07/15の日記
09:14
彩雲国幼稚園 3
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子供の世界は何が流行するか、大人にはまったく解らない。
テレビでよく見るお笑い芸人のギャグだったり、子供アニメの変身ごっこだったり。
一種の熱病のように、流行したと思ったら、すぐに次の新しい流行が来る。
今回もそんな一過性のものだろうが、彩雲国幼稚園では変な行動が流行っていた。
(またやってる・・・)
絳攸がふと、グラウンドに目をやると女の子2人が例の遊びをしていた。
一人が目をつぶっていると、もう一人がその子のほっぺたにチュっとキスをするのだ。
そして2人で向かい合って、キャーっと言ってはしゃぐという、何とも不思議な儀式がブームになっていた。
何が面白いのか大人の絳攸には欠片も理解できないが、危険な遊びではないし、子供たちも楽しそうなので大人しく見守ることにした。
どうせ、すぐに飽きる。子供の世界は目まぐるしく、絶えず動いているのだ。
「こーゆ!」
相変わらず自分を呼び捨てにして、藍楸瑛が満面の笑みを浮かべ駆け寄ってきた。
玩具の片付けをしていた絳攸のあまり大きくない背中に、後ろから抱き付いてきた。
「チューしてあげる」
「俺はいい。ほら、向うの女の子達がお前を見てるぞ」
重くはないが仕事の邪魔なので、背中から降ろしてグラウンドの方を指差す。
そこには女の子の集団が、遠目にこちらをチラチラ見ていた。
あっちに行ってやれと促す。
「彼女たちとはもう、チューしてきたからいいの」
「・・・・・・全員としたのか?」
「うん」
嘘だろ、20人近くいるぞ。
確かに皆、嬉しそうに頬に手をあて、顔を真っ赤にしていた。
この得体の知れない子供に少しゾッとした。
「ここに座って」
楽しそうな楸瑛に手をぐいぐい引かれ、子供用の椅子に座るように指示される。
・・・・まぁ、子供の遊びだし。
頬にキスをされ、キャーと言ってはしゃいだら終わりだ。
それより早くしないと、みんなの連絡帳に記入する時間がなくなってしまう。
「こーゆ、目をつむらないとダメだよ」
「ああ」
そういえば、みんな目を瞑っていたなと思い出す。
子供の中でも一応、手順があるらしい。
「・・・好きだよ、絳攸」
耳元に吐息まじりの、子供らしくない声がかかり、不覚にもドキドキしてしまった。
小さな手が絳攸の頬を包み、見えないけれど楸瑛の顔が近づいている気配がした。
(!!!!)
唇に、自分以外の唇があたる感触がした。しかも
(なっ、何か口の中に入ってきたー!!!)
※ ※ ※ ※ ※
まさかの、ベロちゅう。
「絳攸」って言えるくせに、可愛さ演出で「こーゆ」と言う、真っ黒い子供楸瑛。
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