07/20の日記

21:35
彩雲国幼稚園 4
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楸瑛は今日も楽しげに通いなれた学び舎の門をくぐる。
去年までは歌やお遊戯になんの興味ももてず、つまらない幼稚園生活を無為にすごしていた。
だが絳攸先生が赴任して以来、楸瑛の世界は一変した。



(今日は何して(絳攸で)遊ぼうかな)

自分の一挙手一投足にあたふたする絳攸を見るのが、楸瑛の何よりの楽しみだ。
そろそろ、わざとしてる事に気づいてもいい頃なのに、一向に気づく気配がない。
何事にも現実的なはずの絳攸は、意外と子供に対して純粋で無邪気という幻想を持っている。
まぁ、変に警戒されるよりいいので、このまま黙っておこう。

靴を下駄箱に入れ、キリンの絵が描かれた扉を開ける。
そこには青銀色の髪が朝日に照らされ綺羅綺羅と輝く絳攸先生が生徒を迎え入れる準備をしていた。


「おはよ。こーゆ」

「おはよう楸瑛。今日も一番乗りだな」

「だって一秒でも早く、こーゆに会いたいんだもん」


おだてても何もでないぞ、と絳攸は少し照れたように笑った。


「こーゆ、今日はサッカーをして遊ぼう」


絳攸は生徒に人気があるので、こうして朝一番に約束をとりつける。
他の生徒と絳攸が仲良く遊ぶ姿なんて見るに耐えられない。
今日も楽しい一日になるはずだった。邪魔者さえ入らなければ・・・。




「絳攸!君は藍楸瑛だけの担任じゃないのですよ」

「楊修先生・・・・」

(うるさい先生がきた・・・)


いつも楸瑛と絳攸が遊んでいると楊修先生がきまって邪魔をする。
コアラ組担当で、新人先生の絳攸の指導も担当しているらしい。
一部の女の子に熱狂的な人気を誇っており、仕事がすごく出来ると絳攸から聞いたことがあった。
外見は酷薄な印象がするし、可愛いコアラのエプロンが全く似合っていない。
とても子供好きとは思えず、なんでこの職業を選んだのか謎だ。


「藍楸瑛、君もたまには子供たちと遊んで協調性を身に付けなさい」


ほら友達が来ましたよ、と出入り口を指差し出て行くよう促す。
この場から追い出そうという意図が丸見えだった。
楸瑛の直感が警鐘をならす。
きっと楊修先生も絳攸の事が好きなのだと。


(ちょっと卑怯だけど、しょうがない・・・・)


「イタタタタ!!!」

「どうした、楸瑛!」

「こーゆ。僕、お腹いたい」


抱っこ。と両手を広げて強請る。
絳攸は躊躇することなく楸瑛を抱き上げ、心配そうに覗き込む。


「大丈夫か?」

「うん。こーゆがずっと抱っこしてくれたら治るよ」


絳攸の肩越しに楊修先生を見る。
無表情を装っているが、あきらかに憤怒のオーラを醸し出していた。
僕と絳攸を引き離そうとするからだ。


「ずっと抱き合ってようね。絳攸」

「・・・っん。こら、あんまり耳元で喋るな」


うん、ごめんね。となおも耳元で囁く。
ここが弱いことを知っているので執拗にせめる。





絳攸先生は僕のものなんだから、絶対誰にも渡さない。







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楸瑛WIN。
ちび楸瑛は欲望に忠実です。

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