07/31の日記

09:11
彩雲国幼稚園 5
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今日も彩雲国幼稚園の生徒たちはみんな元気に走り回り楽しそうに遊んでいた。
絳攸はそんな子供たちを微笑ましく眺めながら、来月に控えた父兄参観日の指導計画書の草案を練っていた。


「こーゆ。お医者さんごっこしよう〜」


楸瑛がパタパタと軽やかな足取りで絳攸に近づいてきた。
絳攸の手をとり、遊ぼうとせがむ。
楸瑛もままごとのような「ごっこあそび」をするのかと思うと、その無邪気さに思わず笑みが零れる。


「僕がお医者さんで、こーゆは患者さん」

「ああ。いいぞ」

「僕は手術の上手なお医者さんなんだ」

「それは凄いな」

「診療科目は、泌尿器科で」

「ちょ、ちょっと待った!!!」


あまりに生々しい診療科目に何となく身の危険を感じ、直感に従い意義を唱える。


「ポピュラーな内科にしよう」

「えーっ」


楸瑛は渋々といった様子で了解した。
しかし、いったいどこらかあんな言葉を覚えてくるんだろう。
子供の学習能力はあなどれない。


「じゃあ、こーゆ服脱いで」

「え?」

「診察してあげるから、ねっ!」


子供の期待に満ちた瞳を向けられると絳攸は弱かった。
こんな時、どうしたら話をそらせるのだろうか?
そんな事が頭の中をグルグルと駆け巡っていた。


「・・・・・・」

「・・・・・・」

「やっぱり泌尿器科のほうが・・・」

「待て待て待て!!」


じゃあ早く、と急かされる。
なおも躊躇し押し黙った絳攸に楸瑛はため息を一つついた。


「じゃあ、僕が脱がせてあげるよ」

「え?」


楸瑛は楽しそうに絳攸のシャツに手をかけ、手際よくボタンを外してゆく。


「こらこら!ちょっと待て」

「じゃあ自分で脱ぐの?」


それでも良いよ、と耳元で囁くと絳攸の体がビクッと跳ねた。
そうしている間にもエプロンの紐は解かれ、ボタンも順調に外されてゆく。
如何して良いか解らず、絳攸は羞恥でギュッと瞳を閉じた。


「藍楸瑛!先生で遊ぶのは感心しませんね」

「「楊修先生・・・」」


そこには両腕を組み、壁にもたれかかった楊修が立っていた。
絳攸は慌てて自分の膝の上に乗っていた楸瑛を下ろし、乱れた服を直した。


「絳攸、あなたは遊んでる暇などないでしょう。指導計画書はできてるんですか?」

「そ、草案なら出来てます」


持ってきます、と絳攸は顔を真っ赤にしてその場から逃げるように立ち去った。





絳攸がその場を去ると、先ほどまで浮かべていた楸瑛のお日様のような笑みは消え、無表情で楊修と対峙する。


「子供の遊びに口をはさむのはどうかと思いますけど」

「都合のいいときだけ子供をふりかざすのは止めなさい」

(気に喰わない!)

(この餓鬼!)


その後、2人の険悪なムードは絳攸が戻ってくるまで続くのであった。





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楸瑛が常春すぎました
次は楊修視点で書いてみよう

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