Short Story Byツバメ
□いつかは壊れるけれど
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あたしのパソコンが壊れた。
壊れてしまった。
昔、3ヶ月間必死にねだって買ってもらったMyパソコン。
「あ〜あ。」
もう動かなくなってしまったキーボードを指でつつきながらため息。
お前とも長い付き合いだったよなあ、なんて。
「うーっす。」
合い鍵をチャラチャラ言わせながら入ってきた元希。おーと気のない返事を顔を見ずにする。
「んだよ、元気ないな。どうした?」
「パソコンが壊れた。」
「パソコン〜?」
なんだそんなことかと軽く笑う。
「ちょっと!!あたしは真剣なのよ。」
「あー、かなり長い時間使ってたしな。」
幼なじみから彼氏に発展した元希はほとんど全てあたしのことを知っている。
「そうなの、あたしにとって相棒みたいなやつだったの。」
データも全部消えちゃっただろうしさぁ。
「…いつかは全て壊れるんだよ。」
元希らしくない真剣な口調だったから思わず顔を見た。少し伏せた睫が影を作って色っぽい表情をつくる。
ねぇ、元希は何について話しているの?
思わず元希の腕をぎゅっと掴んでいて。
「…大丈夫、あたしがずっとそばにいるから。」
だからそんな悲しげな顔をしないで。
一瞬不安げな子供みたいな顔をした榛名は、嬉しそうな笑顔になった。
「そうだよな。俺らしくもねーわ。あっ夕飯食べに行こうぜ。」
壊れるものは壊れる。いつかは全てなくなってしまう。
だけど存在しなかったわけではないから。
あたしのパソコンが修理に出されて帰ってくるのはそれから2週間後のこと。
END
→ひとりごと。