桜舞う木の下で

□桜舞う木の下で〜1章〜
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ここ数日すっきりしない天気が続いていたけど今日は久しぶりの快晴。
空気が春めいて暖かい。

せっかくの休みだし、散歩でもしようかとカメラを持って外に出た。
最近ゆっくり景色を見ることも無かったから目に見える変化に驚いた。


「いつの間にか春らしくなってるなぁ。」


春休みにはいったものの相変わらず部活はあった。
来月頭に行われる遠征に向けて。
ただ今日と明日は新入生の入学説明会だとかで唯一の休みだった。




そんなことを考えているうちに大きな公園に来ていた。


僕がまだ小さい頃は家族で遊びに来たりしていた公園。
普段来ない場所だから、いつのまにここまで来たのかとちょっとおかしくなったけど…。
ここは広々とした原っぱの周りを大きな木々が囲むように植えられていて、その一部にピンク色の蕾がいくつもついていた。
ちょっとした花見スポットでもあるここももうすぐ賑やかな時期を迎えるんだろうな。




ーカシャッー

春を感じさせるつくしやたんぽぽ、日を浴びてキラキラ光る若葉を1つ1つカメラに収めていく。

ふと気がつくと随分奥のほうに来てしまっていた。
目の前にはすでに花が開いている桜があった。
5分咲きといったとこかな。


そしてその下には僕と同じように早咲きの桜を見つけたのか、1人の女の子がいた。


薄いピンク色のワンピースに白い帽子、腰まである黒い髪、優しい眼差しを向ける横顔が綺麗だなと思った。


その時、突然の風に彼女の帽子が僕の方へひらりと舞い落ちてきた。



「きゃっ…」

彼女は小さな悲鳴をあげ、帽子の行方を見つめる。


転がった帽子を拾い、埃を落として彼女に歩み寄る。


「はい、どうぞ。」
僕は帽子を彼女に差し出す。


「ありがとう。」
桜に向けたのと同じ優しい眼差し。

ところが。


「…あの?」

何故か僕の顔をじっと見てくる。

どうしたらいいのか悩んでいると、

「あ…ごめんなさい。ちょっと知り合いに似てたから…
帽子、ありがとう。」

そう言って女の子は走り去ってしまった。

一瞬寂しいような悲しいような表情を見せて。
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